習い事や趣味がオンラインに?〜デジタル化で変わる人との温かい繋がり方〜
はじめに:身近な場所で感じるデジタル化の波
最近、地域の公民館での習い事や、長年続けている趣味の集まりでも、「なんだか様子が変わってきたな」と感じることはありませんか? 例えば、先生や代表の方からの連絡が電話からスマートフォンのメッセージアプリになったり、集まりの日程確認がウェブサイトで行われるようになったり。さらには、教室そのものがオンラインで行われるようになった、という話を聞く機会も増えているかもしれません。
このようなデジタル化は、私たちの日常生活の様々なところに広がっています。銀行の窓口が減ったり、お店でセルフレジが増えたりするのと同じように、これまで直接顔を合わせて行われていた趣味や習い事の場でも、少しずつ形が変わってきています。
こうした変化は、私たちに便利さをもたらす一方で、「これまでのように気軽に質問や雑談ができなくなった」「デジタルが苦手だから、集まりについていけるか心配」といった戸惑いや、少しばかりの疎外感を感じさせることもあるかもしれません。
この記事では、習い事や趣味の世界で進むデジタル化が、私たちの日々の繋がり方にどのような影響を与えているのかを考えていきます。そして、デジタル時代だからこそ大切にしたい、人との温かい繋がりを保つためのヒントを探していきましょう。
趣味・習い事のデジタル化で何が変わったか
まず、具体的にどのようなデジタル化が進んでいるのか見てみましょう。
- 連絡手段の変化: 以前は回覧板や電話での連絡が主だったのが、最近ではLINEなどのメッセージアプリを使ったグループでの連絡や、メールでの連絡が一般的になりました。急な変更もすぐに伝わる点は便利ですが、スマートフォンを持っていない、あるいは操作に慣れていない方にとっては、情報を受け取りにくくなる可能性があります。
- 情報共有の場: 催しのお知らせや活動報告が、専用のウェブサイトやSNSの非公開グループで行われることがあります。写真などが共有しやすくなり、離れていても雰囲気が伝わりやすくなりますが、これもデジタルにアクセスできるかどうかが鍵となります。
- 予約・出欠管理: 事前に参加者を把握するため、専用のアプリやウェブサイトで予約や出欠の登録を求められるケースが増えています。手書きの参加者名簿に〇をつける、といった方法は減ってきました。
- 活動場所の変化: 一部の講座や教室は、実際に集まるのではなく、自宅などからインターネットを通じて参加する「オンライン形式」に移行しています。遠方の方でも参加できるようになったり、天候に左右されなくなったりするメリットがある一方で、同じ空間で顔を合わせる機会は失われます。
これらの変化は、運営側にとっては効率化や参加者の拡大につながることがあります。しかし、参加する私たち、特にデジタル技術にそれほど慣れていない方にとっては、これまで当たり前だった交流の形が変わり、少し寂しさを感じる原因となることもあります。
デジタル化による人との繋がりの変化
デジタル化によって、趣味や習い事における人との繋がり方はどのように変わるのでしょうか。良い面もあれば、少し残念に感じる面もあります。
ポジティブな変化
- 場所や時間の制約が少なくなる: オンライン形式であれば、体調が優れない日や、自宅から遠い場所で開催される場合でも参加しやすくなります。自分のペースで学べる動画教材などが提供されることもあります。
- 情報が早く正確に伝わる: 急な中止や変更の連絡が、グループメッセージなどですぐに届くようになり、行き違いが減ります。
- 活動記録が残りやすい: 写真や動画を簡単に共有できるようになり、楽しかった思い出を振り返ったり、欠席した人に様子を伝えたりしやすくなります。
- 新しい人との出会いの可能性: 地域に限定されず、全国や海外から参加者が集まるオンライン講座では、これまで知り合えなかった多様な人々と繋がる機会が生まれます。
ネガティブな変化や懸念
- 偶発的な交流の減少: 休憩時間や活動の前後での立ち話、偶然隣に座った人とのちょっとした会話など、対面だからこそ生まれる自然な交流の機会が減りがちです。こうした「ついで」の会話から、趣味以外の個人的な繋がりが深まることもよくありました。
- デジタル操作への戸惑い: 連絡手段や予約システムがデジタルに移行すると、スマートフォンの操作に自信がない方は、必要な情報にたどり着けなかったり、参加手続きが難しく感じられたりして、疎外感を抱くことがあります。
- 「顔が見えない」ことによる寂しさ: オンラインでの参加は便利ですが、画面越しでは相手の細かな表情や仕草が分かりにくく、対面で感じるような「一緒にいる」という温かさや安心感が薄れることがあります。
- デジタルデバイド(情報格差)の発生: デジタル機器を持っていない、あるいはインターネット環境がないといった状況にあると、活動に必要な情報や参加機会そのものから取り残されてしまう可能性があります。
特に、長年同じ場で活動してきた仲間との間では、デジタル化によって連絡の頻度は増えても、心の距離が少し遠くなったように感じる、という方もいらっしゃるかもしれません。
温かい繋がりを保つためのヒント
デジタル化の流れは今後も進むと考えられますが、そんな時代でも、趣味や習い事を通じて人との温かい繋がりを保つことは十分に可能です。大切なのは、少し意識を変えたり、行動を起こしてみたりすることです。
- デジタルツールへの「慣れ」を少しずつ: 全てを一度に理解しようとせず、まずは「連絡を見るだけ」「先生から送られてきた写真を見るだけ」といった簡単なことから始めてみましょう。家族や、デジタルに詳しい知人に教えてもらうのも良い方法です。無理のない範囲で、少しずつ慣れていくことが大切です。
- 分からないことは「正直に伝える」勇気: デジタル操作で困ったことや、連絡がうまく受け取れないことなどがあれば、遠慮せずに先生や仲間に伝えてみましょう。「私も同じです」「一緒にやり方を覚えましょう」と、共感してくれる人や助けてくれる人がきっと見つかるはずです。
- オンラインでも「挨拶」や「声かけ」を大切に: オンライン会議システムなどを使う場合でも、参加した時には画面に向かって笑顔で挨拶したり、コメント機能を使って簡単な感想を送ったりするだけでも、お互いの存在を感じやすくなります。「〇〇さん、今日の〇〇、とても分かりやすかったです」といった一言が、繋がりを深めるきっかけになります。
- オフラインの機会をより大切に: もし対面での活動が残っているなら、その機会をこれまで以上に大切にしましょう。活動の前後や休憩時間には、意識して周りの人に話しかけたり、笑顔を向けたりすることで、失われがちな偶発的な交流を補うことができます。
- 共通の話題を広げる: 趣味や習い事そのものだけでなく、そこから派生する話題(例えば、同じ趣味に関するテレビ番組、関連する地域の情報など)について話すことで、会話が弾み、人間関係がより豊かなものになります。デジタルの話題だけでなく、共通の興味を通じた会話を楽しみましょう。
- 小さな「ありがとう」を伝える: デジタルで情報を受け取った時や、誰かが助けてくれた時に、「ありがとう」の気持ちを言葉やメッセージで伝えることを忘れないでください。感謝の気持ちは、人と人との繋がりを温かく保つための大切な潤滑油です。
デジタル技術はあくまでツールです。その使い方を工夫することで、これまでとは形が変わっても、人との温かい繋がりを維持し、さらに新しい繋がりを生み出すことだってできるのです。
まとめ:変化を受け入れ、繋がりを育む
習い事や趣味の世界で進むデジタル化は、私たちの繋がり方に様々な変化をもたらしています。便利になった点がある一方で、これまでの対面での濃密な交流が減り、寂しさや戸惑いを感じることもあるかもしれません。
しかし、デジタル化は避けられない時代の流れでもあります。大切なのは、変化を恐れすぎず、その中でどのようにしたら人との温かい繋がりを保てるのかを考えることです。デジタルツールに少しずつ慣れてみたり、分からないことは周りの人に頼ってみたり、オンラインでも意識的に交流を深めたりと、できることから始めてみましょう。
そして何より、同じ趣味や習い事を楽しむ仲間との「場」そのものを大切にすること。デジタルを活用しながらも、対面での交流の温かさを見直したり、互いを思いやる気持ちを忘れなかったりすることが、心の距離を近づけ、豊かな人間関係を育む鍵となります。
デジタル時代だからこそ、人との温かい繋がりの価値を再認識し、自分にとって心地よい距離感を保ちながら、趣味や習い事の時間をこれからも楽しんでいっていただきたいと思います。